商標登録制度における専門用語

(1)商標権

 商標法は、商標に化体した業務上の信用を保護することにより、取引秩序の維持を通じて健全な産業の発達に寄与し、併せて需要者の利益を保護することを目的としています。また、商標権は、登録商標と同一の商標を指定商品・役務と同一の商品・役務に使用する行為にその効力が及び、さらには、類似の商標を指定商品・役務と同一又は類似の商品・役務に使用する行為にもその効力が及びます。

 商標権には積極的効力、消極的効力などと呼ばれる効力があり、両者は表裏一体の関係にあります。前者の積極的効力とは、登録商標と同一の商標を指定商品・役務と同一の商品・役務に使用する権利を有することであり、後者の消極的効力とは、第三者が登録商標と同一の商標を指定商品・役務と同一の商品・役務に使用する行為などを排除する権利を有することです。

 特に、後者の具体例としては、第三者による商標の使用を差し止める差止請求権、第三者による登録商標の使用により商標権者が被った損害を賠償させる損害賠償請求権(これは民法上認められる権利)、侵害者に対する刑事罰の適用などがあり、商標法及び民法に基づき商標権者には手厚い保護がなされます。

(2)団体商標制度

 団体商標制度とは、所定の団体が、その団体構成員に使用させる商標について商標登録を受けることができる制度をいい、団体商標とは、事業者を構成員に有する団体がその構成員に使用させる商標であって、団体の構成員に係る商品・役務として共通的性質を表示するものをいう。

(3)地域団体商標制度

 地域の名称及び商品・役務の名称等からなる商標について、地域との密接な関連性を有する商品・役務に使用され、需要者の間に広く認識されている場合には、事業協同組合その他の組合による地域団体商標の登録を可能とする制度です。

(4)弁理士

 特許法、実用新案法、意匠法、商標法などの知的財産権制度の専門家であり、国家資格を保持する人のことを指します。一般的には、弁理士試験を合格した人が日本弁理士会に登録することにより弁理士を名乗りますが、その他にも、弁護士となる資格を有する方や特許庁で所定期間審査業務を行っていた方も弁理士登録ができます。

(5)特許事務所

弁護士の法律事務所、税理士の税理士事務所と似たような感じで、弁理士が弁理士事業を営む事務所です。通常、特許事務所の人員構成はボス弁理士1人、雇われ弁理士3割、技術アシスタント3割、事務アシスタント3割程度となり、弁理士に仕事を頼んだと思っても、無資格の技術アシスタントが実質的な仕事をやる場合があります。人材の流動性が高い業界なので、業務の継続性が担保されない場合も多々あります。

(6)商標登録出願(又は商標登録申請)

商標権を取得するためには、商標登録出願(商標登録申請)を行う必要があります。商標権の付与は特許庁による行政処分の一種であるため、他省庁が行う行政処分と同様に、商標登録申請を行う必要があるのです。また、商標登録申請は、書類により直接窓口にて行う申請や、インターネットを利用した電子申請のどちらでも行うことができます。申請は、登録を希望する商標と、この商標を使用する商品・役務とを記載して申請します。

(7)出願公開

 商標登録申請をすると、すぐに申請内容を記載した出願公開公報が発行され、出願人が商標登録の申請を行った商標及びそれを使用する商品・役務について公開されます。

(8)審査請求

 商標登録申請は、特許制度とは異なり、改めて審査請求をする必要が無く、すべての申請について特許庁審査官による審査が行われます。

(9)中間処理

 商標登録申請を行ったとしてもすんなり登録査定とならない場合があり、特許庁審査官より注文がつきます(拒絶理由通知と言います)。誰しも通る道ですので、落ち着いて、本願商標と登録商標等との差異を説明して登録査定をいただきましょう。通常、商標は補正しませんので、商品・役務を補正すると共に拒絶理由が解消したことを説明します。

(10)手続補正書

 上記のように、拒絶理由通知がなされた場合など、本願商標と先行登録商標等との差異を明確にするために、商標津登録申請した内容を補充・修正するための書類です。主に、中間処理時に使用します。

(11)意見書

 上記のように、拒絶理由通知がなされた場合、本願商標と登録商標等との差異を説明するための書類です。商標登録申請時の内容に基づき説明しても良いし、上記手続き補正処理により補正した内容に基づき説明しても良く、中間処理時に使用します。

(12)商標の類似

 商標の類似とは、対比される商標が同一又は類似の商品若しくは役務に使用されると、商品又は役務の出所の混同を生ずるほどに近似していることをいいます。
 商標の類否判断は、商標の外観、称呼、観念を要素として判断します。外観、称呼は説明するまでも無いと思いますが、商標の観念が類似するとは、対比される商標の意味が相紛らわしいことを指します。また、商標の類否判断においては、商品又は役務の同一・類似が前提となります。

(13)商品又は役務の類似

 商品又は役務の類似とは、対比される商品又は役務に同一・類似の商標を使用すると出所の混同を生ずる程に両商品又は役務が近似していることをいう。
 類比判断は、下記の要素に基づいて、商品又は役務の取引実情を考慮して総合的に判断される。   ①商品の類似
 生産部門の一致、販売部門の一致、原材料・品質の一致、用途の一致、需要者の一致、完成品と部品の関係
  ②役務の類似
 提供の手段・目的等の一致、提供に関連する物品の一致、需要者の範囲の一致、業種の同一、当該役務に関する業務又は事業者を規制する法律の同一、提供する事業者の同一

(14)商標権の効力

 商標権の効力とは、指定商品又は指定役務について登録商標を独占排他的に使用することができ(専用権)、かつ、類似する範囲内において他人の使用を排除することができる(禁止権)ことをいう。

(15)商標の機能

 商標の機能とは、商取引における商標の働きをいい、具体的には、商品・役務の識別、出所表示、品質・質の保証および宣伝広告という4つの機能がある。
 自他商品又は役務の識別機能とは、個性化された一群の商品・役務を他の商品・役務群から識別する機能をいい、商品・役務の同一性を表示するための機能である。
 出所表示機能とは、一定の商標を使用した商品・役務は必ず一定の出所から流出したものであることを示す機能をいい、上述の識別機能を前提として発揮される。
 品質・質の保証機能とは、同一の商標を使用した商品・役務は常に同一の品質・質を有することを保証する機能をいい、品質・質の同一性を保証する機能である。
 宣伝広告機能とは、需要者に商標を手掛かりとして商品・役務の購買意欲を起こさせる機能をいい、静的な機能である出所表示機能等に対して動的な機能である。

(16)登録異議の申立

 登録意義の申立とは、商標登録後の一定期間内に広く第三者が商標登録の取消しを求めることをいう。商標登録後に登録処分の妥当性を審理する目的で設けられているため、何人も申立可能である。

(17)一商標一出願の原則

 審査手続の煩雑化や権利範囲の不明確化を回避するために、商標法は、一商標一出願の原則を採用している。従って、商標登録出願においては、商標の使用する一又は二以上の商品・役務を指定して、商標ごとにしなければならない。ここで、「商標ごとに」とは、一商標ごと、すなわち、一出願には一の商標のみという意味である。

ページの先頭へ